最新映画「海難1890」田中光敏監督  滋賀県訪問 & インタビュー

2015年12月04日

最新映画「海難1890」田中光敏監督  滋賀県訪問 & インタビュー
田中光敏監督の最新映画「海難1890」が12月5日(土)より全国公開される。
田中光敏監督は、過去の作品「火天の城」(09)「利休にたずねよ」(13)では滋賀県でロケを敢行。
そんな『縁』もあってなじみのある本県を訪れ、「滋賀の思い出」「海難1890」について語っていただいた----

-まずは2013年に公開された「利休にたずねよ」モントリオール世界映画祭、最優秀芸術貢献賞おめでとうございます!私たちも撮影に関われて嬉しく思います。
 有難うございます。滋賀ロケーションオフィスの人にロケ地を紹介してもらい、最初に僕らが決めていた所よりもずっと良かったので急遽、北野大茶会なども含めて撮らせてもらった。それはすごく感謝しています。
滋賀県は日本人が大切にしなければならない重要文化財や国宝があるだけでなく自然を含め今に残っている。絵になるのです。 

(C) 2015 Ertugrul Film Partners
   僕らも安心して撮影できる環境を整えてもらえるのはすごく有難いです。また  撮影だけでなく、完成後も広報活動を含めて協力していただいたことも有難く、滋賀に対しては、いい印象を持っています。撮影中は滋賀ロケーションオフィスの方にご飯がおいしいところをたくさん教えてもらって「うなぎ」とか、「丁稚羊羹」とか食べました(笑)。

― 今回の「海難1890」はこれらの映画を撮りながら10年前からずっと温めてきた作品とお聞きしました。
出来上がった感想はいかがですか。

 10年前は単館でもいいから、エルトゥールル号のエピソードを、とにかく伝えられるもの、残すべきものとして、映画に携わる者として何とか形にしなければと思いやってきました。それがまさかこんなにたくさんの人の力を借りてこんなスケールのある映画になるとは僕は夢にも思わなかった。感想については、この作品をまずはみなさんのところにお届けできるように頑張って、僕が振り返るのはそれからと思っています。

― 今回の作品が、1890年、台風で座礁したトルコ船軍艦を助けた日本人の話「エルトゥールル号海難事故」と95年後、テヘランで日本人を助けてくれたトルコ人の話「テヘラン邦人救出劇」の2本から構成されていることが、より深く感動しました! 
 有難うございます。今から5年前、串本町でこの話をこの町で映画にできないだろうかとパネルディスカッションをしたのですが、集まった町民は600名。その時2人の方が壇上に上がってきて「自分たちは1985年、テヘランでトルコの人に命を救われた者です。今から120年前、あなたたちの祖先が海難事故にあったトルコ船軍艦を命がけで助けてくれたおかげで私たちは命を救われました。」と泣きながら頭を下げられました。それを見て「日本とトルコが9000キロも離れた場所で友人同士として100年以上もの間つながっていて、この方たちもそこに向かって頭を下げている」と思った時、この2つの話をつなぎ、ちゃんと映像にしなければと思いました。次へ残していかなければと思いました。

-この作品はオリジナルだと思いますが、脚本をお願いする時に監督が特に大事にしたことはありますか?

最新映画「海難1890」田中光敏監督  滋賀県訪問 & インタビュー
 この作品はオリジナル作品で2年半かかりました。
「火天の城」(安土城の築城に携わった宮大工が主人公の映画)もそうですが「伝説に弱者あり」。大きく歴史が動くときには、名もない人たちの力が大きくはたらく。主人公は民衆です。
「目の前に困っている人がいれば助ける」たったそれだけのことを命がけでやった民衆たちを描く映画にしたいと思いました。
また同じように95年後、今度はトルコの民衆がテヘランの空港で帰国できない日本人に救援機を譲ってくれる。陸路で国境を越えるというのは一番危険なことで命がけだったでしょう。
それでも自分たちは日本人に救援機を譲る、それは単なる恩返しだけではなく、「目の前に困った人がいたら助ける」という一心で日本人を助けてくれたのだと思います。
そういう心をもった民衆がいたから125年たった今でも二国の友情は続いているということをちゃんと表現できるものにしようと思いました。「民衆の姿をちゃんと映画の中で描こうね」と脚本の小松江里子さんと話しました。

-日本での撮影話を教えていただけますか?
 救出シーンは京都の撮影所で撮影しました。本当は外で池に水をはって撮ると言っていたのですが、京都の1月はあまりに寒くてそれではだめだと、セットの中に土を入れて、穴を掘ってプールを造って、波を起こす機械を入れたり、岩場を造って救出シーンを撮りました。海の中でももちろん撮りました。
とはいえ波はかぶるわ、風は吹くわ、台風でずぶぬれになるわというシーンをこの一番寒い12月~1月に撮影しないとならない。出演した役者たちは一番つらいロケの一つにこの場面を思っているでしょうね。

-串本の別れのシーンは言葉が伝わらなくても歌と音楽で心を通わせ、おじぎと敬礼をしあったところが本当に感動しました。
 有難うございます。村人たちが歌った歌はスコットランド民謡ですが、日本の歌としてあの時代にはもうあって、言葉がわからない民衆たちがどうやって見送ったら一番トルコの人たちの心に届くだろうかと考えてあの歌にしました。
エキストラ200人は地元の方。みんなそこに立ってリハーサルを始める前から感極まって涙を流しているのです。「見送るシーンなのでそこは笑顔で」と言っても「俺たちに笑顔を要求しても無理」と言われました。エキストラ参加した人たちはかつて見送った人の子孫ですからね。

-オープンセットについても漁村ができていましたね。
 大島に行って、たくさんの資料をみせてもらうと、小学校に通う年頃の女の子が乳飲み子を抱いて学校に通いながら子供の世話をする。お母さんは畑仕事、お父さんは海へ行って生計をたてている村。その村の姿ができるだけ、リアルにみえるような場所で撮影したかったんです。
あとで町長から「僕らはすごく天気に恵まれた。知ってるか、あのオープンセットを組んだ場所はエルトゥールル号の事故で一番亡くなった人があがった湾なんだ。」と聞きました。ロケ地をそこに決めたときは知らなかったのですが、「縁なのだなあ、トルコの人に守ってもらったんだなあ。」と思いました。
また、劇中のキャビンアテンダント役の人が泣きながら寄ってきて「実は母が1985年日本人救出を志願した1人だったんです。『私のかわりにオーディションを受けに行きなさい。』と母に言われて受けに来たんです」という人がいて、やっぱり事実を基にやることでいろんなことがつながっていくのですよね。

-トルコでもオーディションをされたのですね。
 主演のケナンも含めオーディションで選びました。
感情移入してもらえるような芝居ができる人に参加してもらいたかったので。
そんな中で、嬉しかったのは、エルトゥールル号編をトルコでキャストやスタッフにみせたら彼らが涙ぐみながら「俺たちには字幕がないから言葉はわからないけど、彼ら(田村やハル)が何を伝えようとしているのかわかる。
トルコ人を救出しようとしている日本人の思いもよくわかる。俺らはこれを超えて芝居や思いを「テヘラン邦人救出劇編」で伝えていかなければいけないのだ」と話をしていて、それが伝わればきっとうまくいくと確信しました。


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                   (C) 2015 Ertugrul Film Partners
-主要キャストの皆さんについて教えてください。
 内野聖陽さんは日本を代表する俳優さんだと思っているし、彼は本当に真摯に作品に向き合ってくれました。
内野さんはどうやって自然に医者になれるだろうかと、実際の先生に、昔の医者はどんなことを身につけたらいいのかとお聞きして、切れ目をいれたこんにゃくを紐と針で朝10時から夜8時まで本当に毎日毎日縫合手術、心臓マッサージ、骨の折れた人への包帯の巻き方など一生懸命練習していました。そういう風に役を愛してくれる人だからこそ、ああいう存在感や自然な演技ができていくのだなと思いました。

 忽那汐里ちゃんはオーストラリアで生まれ育って、14歳で日本にやってきた子で彼女のルックス(黒目がちな芯の強い女の子。)をハルという女の子にしたかったんです。また今回はトルコでも撮影すると決まっていたので、できれば海外で英語を使ってロケをしても物おじしない、平常心でお芝居のできる子がいいなあと思ったら汐里ちゃんはぴったりでした。彼女の育った環境やもてる才能を存分に今回は映画の中で出してもらえたのではないでしょうか。二人が参加してくれたことはすごく感謝しています。
またケナン・エジェさんやアリジャン・ユジェソイさんなどトルコを代表する俳優さんが参加してくれて、お互いしのぎを削ってお芝居をしてくれたことが映画のプラスになっていると思っています。

-忽那さんとケナンさんに二役を設定したのも過去から現在へつなげるためですね
 そうです。やはり継がれるということ、受け継ぐバトン、それをはっきりわからせるためには一人二役が一番いいだろうと思ったんですね。
ケナンは二役のために痩せると言って、4~5キロ「テヘラン救出編」のために痩せたんです。
みんな頑張って、役作りをしているのでたくさんの人にわかってもらえるといいなあと思っています。

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                                    (C) 2015 Ertugrul Film Partners
-トルコでの撮影について教えてください。
 トルコは国が援助してくれました。また、普段撮影できない場所や、普段通行止めできない大通りをまるまる通行止めにしてくれて、35年前のクラシックカーをおいて、パニックシーンを撮りました。
サーベルを交わすシーンもトプカプ宮殿の中です。
トルコの方は、日本の人たちに自分たちの文化を理解してもらおう、見てもらおうという思いがあったので、できるだけ撮りたい場所に関しては撮らせてもらえました。お互いにとって、お互いの人や国が好きだと思ってもらえるような映画になってほしいです。

-「真心(まごころ)」がこの映画のキーワードになっていますね。
 最近は「真心」という言葉を使わなくなりました。今の日本では死語になったかもしれません。
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ただもしそれは言葉を失ったのではなくて、心を失ったとしたらこれは悲しいことです。脚本の小松さんと日常では使わなくなった「真心」という言葉をあえてこの物語の中心にすえようと話しました。
辞書で「真心」を調べると「見返りを求めない心」と書いてあるけれども、かつての僕らの先人とトルコの人たちを「真心を持った人たち」と表現したかったんです。
今の日本人や世界の人々が、日常、真心をもって向き合えたとしたら、もっと平和な世の中が来ているかもしれません。

たった一つの親切からはじまったこと、小さな村の善意が125年もの間、国と国の間の友情をつなぐことはすごいことです。そのことを先人から学び、これからの平和についても考える。日本とトルコの人以外の国の方にも知ってもらいたいと思います。

■|日本・トルコ合作 「海難1890」 12月5日(土)全国公開
脚本:小松江里子 音楽:大島ミチル 企画・監督: 田中光敏
キャスト:内野聖陽 ケナン・エジェ 忽那汐里 アリジャン・ユジェソイ 他


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■|あらすじ
1890年9月、オスマン帝国の親善訪日使節団を乗せた軍艦「エルトゥールル号」は帰国の途中、和歌山県樫野崎(現:串本町)で台風に遭遇し、船が大破して沈没。500名を超える死者を出す、当時としては世界最大規模の海難事故となった。このとき荒れ狂う海で生命の危機にさらされたトルコ人を目の当たりにした地元住民たちは、台風の高波の中に身を投じて漂流者を助け上げるなど、献身的な救助活動を行った。これによって乗組員69名の命が奇跡的に救われたのである。見ず知らずの外国人を、命がけで助けた彼らの行動はトルコ国民に感銘を与え、トルコの教科書にも取り上げられて後世まで伝えられている。
それから時を経た1985年3月。イラン・イラク戦争が長期化する中、サダム・フセインはイラン上空を飛行する航空機に対して48時間後に無差別攻撃の開始を宣言。各国が救援機を飛ばして自国民を脱出させる中、日本は救援機の派遣を即断できない状況にあった。テヘランに残された邦人は300名以上。刻一刻と攻撃までのタイムリミットが迫る。緊迫した事態を打開するため、イランにいた邦人は官民一体となってトルコへ日本人救出を依頼。その申し出を受けたトルコのオザル首相の英断により、救援機がテヘラン空港へと向かった。このとき空港に集まっていた215名の日本人は、攻撃の2時間前にテヘランからの脱出に成功。その陰には自国機が到着したのにもかかわらず苦境に立つ日本人の搭乗を優先させてくれた、トルコ人たちの真心があった。 困難な状況の中にあって名誉や見返りも求めず、ただ目前の人を救おうと行動を起こした125年前の日本人たちと30年前のトルコ人たち。その勇気と誠意を映し出した真実のドラマが、日本の外務省後援、トルコ政府全面協力という国家的支援を得て、壮大なスケールの合作映画として描かれている。


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Posted by 滋賀ロケーションオフィス at 16:00 │その他